ウクライナ伝統の夏祭り クパーラ祭

ヨーロッパでは、夏至祭を祝う文化が多くあり、ウクライナも同じく、独自の夏至祭があります。キリスト教が広まる前のウクライナでは、多神教で火や水、自然に神が宿ると信じられていました。クパーラ祭はキリスト教前の伝統を多く引き継いでいます。

元々、クパーラ祭は結婚相手を見つける目的の祭りだったと言われています。クパーラ祭では、恋人探しにまつわる伝統が多く、若者にとても人気な祭りです。

クパーラ祭の主役は火、草、水。

水と火によって体を清める習慣があり、人々は焚き火を作り、川や湖がある緑豊かなところで集まり祝います。祭りの名前「クパーラ」もウクライナ語のкупàти(クパーティ/入浴させる)から由来し、清めの儀式にまつわると言う説があります。

火にまつわる行事では、恋人と手を繋ぎ焚き火の上を飛び越えます。手を離さなければ、ずっと幸せな家庭を築けると言われています。もう一つの火の象徴は太陽です。太陽はよく輪として表されていました。例えば、踊りの輪の形やそのときに使われる棒先の輪が太陽を意味します。

クパーラ祭では、自然と緑に敬意を表すことが大切です。多神教だったウクライナでは今でも、枝を折った子に母親が「木は痛いから、謝って」と教える文化が残っています。自然に囲まれて、その時期に咲く花や草を集め、善良なことを考えながら、花輪を作ります。

作られた花輪にロウソクを立て、火をつけて、川に流します。花冠が遠くまで浮かび火が消えなければ、好きな相手と幸せになる予兆。花輪が沈んでしまったら、失恋してしまうと言われています。また、「クパーラの夜に魔法の花「シダの花」をカップルが森で見つければ幸せになる」という言い伝えもあります。

クパーラ祭の夜は魔物が人間界に入り、悪さをすると信じられたので、川で遊ぶのは禁止されていました。昔は農作物の豊富な収穫のために、生け贄の文化もあったそうです。クパーラ祭の草の人形作りはその文化の継承だと言われています。死後の世界、夜や水を司る《マーラ》という女神の人形を作り、祝いの最後にそれを川に沈める伝統があります。

そして、クパーラ祭に欠かせないものは踊りです。


一番人気なものは古いタイプのダンス、ホロヴォードです。太陽を象徴する輪になって、太陽や火を拝めるのは元々の意味ですが、現在は性別、年齢、社会敵地位を問わず、みんなが輪になって、手を繋いで、平等で祭りを楽しむのも一つの魅力です。