ロシアによるウクライナ全面侵攻開始から3年
3年前の2月24日の朝、ウクライナの空に爆発音が響き渡り、平穏な日常が一変しました。突然のロシアによる侵略により、多くの家庭が破壊され、今もなお多くの命が奪われ続けています。戦況の長期化に伴い、現地のニーズは刻々と変化しています。NPO KRAIANYは支援内容を柔軟に見直し、より効果的な支援を提供し続けています。
← ニュースに戻る3年前の2月24日の朝、ウクライナの空に爆発音が響き渡り、平穏な日常が一変しました。突然のロシアによる侵略により、多くの家庭が破壊され、今もなお多くの命が奪われ続けています。ロシア軍による脅迫、暴行、拷問、拉致、強制移住など、数え切れないほどの戦争犯罪が行われ、ウクライナの人々は恐怖と混乱の日々を過ごしています。
2025年1月時点で確認されているだけでも、約15万件のロシアによる戦争犯罪が記録されています。当初、世界中で「キーウは3日で陥落するだろう」と言われていました。
しかし――
ウクライナは1000日以上、
強く、誇り高く
ロシア侵略に抵抗し続けています。
この未曾有の危機に直面し、NPO法人「日本ウクライナ友好協会KRAIANY(クラヤヌィ)」は、2014年のクリミア併合以降に築いてきた現地との強固なネットワークを活かし、迅速に支援活動を開始しました。日本国内で寄付を募り、ウクライナの人々に必要な支援を届けるための活動を展開しています。
当初、NPO KRAIANYは人道支援を最優先とし、食料や医薬品などの生活必需品を現地へ届けることに注力していました。しかし、戦況の長期化に伴い、現地のニーズは刻々と変化しています。その変化に対応するため、クラヤヌィは支援内容を柔軟に見直し、より効果的な支援を提供し続けています。
ウクライナでの課題と取り組み
子供たちの安全・教育
ロシア軍は住宅地、市場、学校、病院などの非軍事施設を無差別に爆撃し、今もなお多くの民間人が犠牲になっています。特に学校や病院といった民間インフラへの攻撃により、これまでに600人近くのウクライナの子どもたちが命を落とし、1,700人以上が負傷しています。彼らはこの戦争の中で最も弱い立場にあり、身体的な危険にさらされているだけでなく、ロシアへの強制送還という重大な脅威にも直面しています。
現在ロシアが占領している地域では、ウクライナの歴史が意図的に改ざんされ、学校の教科書も改変されています。ウクライナがロシアの一部であるという虚偽の情報が広められ、ウクライナ独立運動の英雄は「テロリスト」として描かれるなど、歴史的事実が歪曲されています。さらに、ロシアは占領地域から数千人のウクライナ人の子供を拉致し、本土へ移送した上で、「再教育プログラム」を通じてロシアの価値観や歴史観を植え付けています。2025年2月現在、拉致された子供の数は約2万人にのぼり、多くの親が子供の所在を知らされず、国際社会はこれを重大な人権侵害として非難しています。
また、ウクライナの子どもたちの約44%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の兆候が見られると推定されており、心身の健康にも深刻な影響を受けています。このような状況下で、子どもたちの安全を確保することは急務です。しかし、現在、多くの幼稚園や学校が安全性を確保できないため開校できず、子どもたちは友達と過ごす時間や学ぶ機会を奪われ、教師たちの就労も困難になっています。
彼らの安全と未来を守るため、NPO KRAIANYはシェルターの建設や教育支援に注力しています。安全な居場所の確保、学習環境の整備、心理的ケアの提供など、多角的な支援を通じて、子どもたちが安心して学び、成長できる環境を整えています。



戦争被害者のサポート
ロシアの侵略による戦争被害者は、民間人だけにとどまりません。戦争捕虜となったウクライナ兵や民間人は、ロシア軍による過酷な拷問や虐待を受けています。同報告によると、ロシアに拘束されたウクライナの民間人や捕虜は、食事や医療を提供されず、悲惨な環境で収容されています。さらに、日常的に殴打、脅迫、犬を使った攻撃、模擬処刑、電気拷問や体位拷問といった非人道的な虐待を受けているとされています。
このような残虐行為は性別を問わず行われており、男性のウクライナ人捕虜も性的暴力の脅しを受けたり、品位を傷つける扱いを受けたりしています。現在、ロシアに拘束されているウクライナ人の正確な人数は明らかになっていませんが、すでに3年以上も過酷な環境での拘束を強いられている人々がいることが確認されています。また、2024年9月以降、ロシア軍によるウクライナ人捕虜の処刑が急増しているとの報告もあります。
国際社会は、これらの戦争犯罪を調査し、加害者であるロシアの責任を追及する必要性を訴えています。同時に、前線で負傷した兵士や捕虜生活から帰還した人々に対する医療支援や精神的ケアも、重要な課題となっています。
NPO KRAIANYは、これまでNPO SunPanSaや自衛隊中央病院と連携し、負傷兵への医療支援や精神的サポートを提供してきました。また、負傷兵の東京マラソン参加を通じた医療資金の調達や、一人でも多くの命を救うための応急処置教育プログラムの実施支援など、多岐にわたる支援活動を行っています。今後も、戦争被害者の回復と社会復帰を支えるための取り組みを続けていきます。


インフラへの攻撃と復興支援
ロシア軍はウクライナの電力網、水道設備、通信インフラなどの基盤設備を意図的に標的とし、度重なるミサイル攻撃を行っています。特にエネルギーインフラへの組織的な攻撃により、ウクライナの人々は極寒の冬を電力や暖房なしで過ごさざるを得ない状況に追い込まれています。専門家の試算によると、昨年のエネルギー施設への攻撃により、ウクライナが冬を乗り切るために必要な生産能力の半分にあたる約9ギガワットが失われました。この影響で、病院では医療機器が使用できなくなり、多くの家庭で暖房が機能せず、命の危険にさらされる人々が増えています。
ロシアの戦術の中でも特に残酷なのが「ダブルタップ攻撃」です。これは、最初の攻撃で負傷した人を救助するために駆けつけた救助隊員を狙い、2度目の攻撃を行う手法です。ロシアによる全面侵攻が始まって以来、ウウクライナ国家非常事態庁の第一応答者が活動する現場で少なくとも38回のダブルタップ攻撃が行われ、110人が負傷し、34人が命を落としました。こうした攻撃はジュネーブ諸条約に違反しており、ウクライナの市民が受けた苦しみの深刻さを物語っています。
NPO KRAIANYは、こうした状況に対応するため、住宅や図書館、小児科病院の復興支援を行ってきました。また、前線近くでは移動型の医療施設としても活用できる日本の救急車を提供し、応急処置だけでなく緊急初期手術が可能な環境を整えるなど、戦争被害者が再び安心して生活できるよう支援を続けています。


避難者のサポート
ロシアの侵略により、多くのウクライナ国民が国内外で避難生活を余儀なくされました。一部の避難者は帰還しましたが、国連の報告によると、2025年2月時点で400万人がウクライナ国内、680万人が国外で避難生活を続けています。日本には約2,000人のウクライナ避難者が暮らしているとされています。
避難者が直面する課題は多岐にわたりますが、最も大きなものは「言語の壁」です。日本語の習得が不十分なため、日常生活でのコミュニケーションの困難、就職活動の制約、社会参画の難しさといった問題が生じています。特に医療の分野では、適切な病院を見つけること自体が難しく、さらに通訳がいないため診察の予約が取れない、診察室への同伴が制限されるといったケースが発生しています。その結果、適切な医療を受けることができず、受診や薬の購入を諦める避難者も少なくありません。
教育の面でも、多くの避難者が不安を抱えています。2022年に小中高校生として来日した子どもたちは学年が上がり、進路について悩む時期を迎えています。多くの避難者は、ウクライナのオンライン授業を受けながら日本の学校にも通うという二重の学習負担を抱えています。しかし、日本語の習得が難しく、日本の学校の授業についていけずにウクライナのオンライン学校に専念する家庭もあります。とはいえ、ウクライナの学校を卒業した後に日本の大学へ進学するには、日本語スキルが不可欠です。さらに、経済的な事情により学費の負担が難しい家庭も多く、大学の受け入れ状況や奨学金制度に関する問い合わせが増えています。
NPO KRAIANYは、こうした課題に対応するため、日本語教育の支援、通訳サポート、子どもたちの教育支援を行っています。特に、外国にルーツを持つ子どもたちのためのウクライナ学校「ジェレリツェ」やオンラインセミナー「EDUHUB」を運営し、学習環境の整備に取り組んでいます。また、避難者の就労支援にも力を入れ、安心して日本で生活し、新しい未来を築けるよう、多角的な支援を続けています。

ロシアのプロパガンダへの対抗
ロシアは長年にわたり、目的を達成するために偽情報とプロパガンダを戦略的に活用してきました。その手法は多岐にわたり、統計の歪曲、偽データの提示、正しい情報を誤解を招く形で解釈するなど、意図的な情報操作に依存しています。こうして操作されたデータは、特定のストーリーを形成し、世論に影響を与える上で重要な役割を果たしています。
ロシアの偽情報キャンペーンは、クローンウェブサイト、フェイク記事、ソーシャルメディアのボットネットワークを通じて拡散され、ヨーロッパをはじめとする国際社会のメディア環境に侵入しています。さらに、AI技術を活用して偽のニュースコンテンツを作成し、信頼できる報道機関や政府、シンクタンクを模倣したドメイン名を取得することで、無防備な読者を巧妙に虚偽の情報へと誘導しています。
情報戦も、この戦争の極めて重要な側面の一つです。NPO KRAIANYは、講演会の開催、メディアの情報精査、SNSでの正確な情報発信を通じて、ロシアのプロパガンダに対抗する活動を続けています。真実を伝えることで、虚偽の情報による誤解を防ぎ、世界がウクライナの現状を正しく理解できるよう努めています。

池上彰さんと考える「私たちはなぜウクライナを支援するのか?」


ウクライナ文化と重要文化財の保存
ロシアの本格的な侵攻が始まって以来、ウクライナ国内の872件以上の文化遺産がロシア軍の攻撃により被害を受けました。ユネスコの報告によると、149の宗教施設、241の歴史的・芸術的建造物、32の博物館、33の記念碑、18の図書館、1つの文書館、2つの遺跡が破壊されており、その被害は拡大し続けています。特に、ハルキウ、ヘルソン、マリウポリ、ドネツィク州などの地域での文化遺産への攻撃が顕著であり、ロシア軍はウクライナのアイデンティティそのものを消し去ろうとしていることが明白です。
この戦争は単にウクライナ人を殺すためだけではなく、ウクライナの歴史、文化、そして祖先への誇りを破壊することを目的としたものでもあります。ロシアは意図的にウクライナの文化財の略奪と破壊を進め、占領地域では博物館や美術館から貴重な芸術品や歴史的資料が持ち去られています。
さらに、占領地ではウクライナ語の教育が制限され、教科書の内容が改ざんされるなど、文化的抹消が進められています。ウクライナの次世代に対し、ロシアの価値観を植え付けることを目的とした教育政策が実施されており、ウクライナの子供たちが母国の文化や歴史を学ぶ機会を奪われています。
戦争の影響により、ウクライナの文化遺産は危機的な状況に直面しています。こうした中、NPO KRAIANYはウクライナ文化の保存と普及に取り組んでいます。ウクライナカフェ「クラヤヌィ」の運営や、各種イベント・ワークショップの開催を通じて、日本の皆さんにもウクライナ文化を知ってもらい、共に守る活動を推進しています。文化遺産の保護には国際的な協力が不可欠であり、日本にいる私たちもこの問題に関心を持ち、支援することが重要です。
次回のイベント情報は、公式ウェブサイトやSNSで随時お知らせしています。


身近でできる支援
日本にいる私たちにも、ウクライナを支援するためにできることがあります。戦争は遠い国の出来事ではなく、国際社会全体の問題です。一人ひとりの行動が、ウクライナの人々の生活・世界の民主主義を守る力になります。
1. 寄付で支援する
NPO KRAIANYや他の信頼できる団体への寄付を通じて、ウクライナ現地の支援活動を直接サポートできます。特に、医療物資、避難民の自立支援、医療支援、復興活動など、ウクライナには依然として多くの支援が必要です。NPO KRAIANYへの寄付は、ウェブサイトから行うことができます。
また、Benevityのような企業向け寄付プログラムを利用すれば、勤務先を通じて支援することも可能です。会社のマッチングギフト制度を活用できる場合は、より大きな影響を生むことができます。
2. ウクライナを知る・体験する・共有する
ウクライナの現状や文化を知ることは、大きな支援につながります。情報を正しく理解し、広めることで、誤った認識やプロパガンダの影響を防ぐことができます。
- イベントやワークショップに参加する:ウクライナの文化や歴史について学べる機会を活用し、実際に体験することで、より深い理解を得ることができます。
- SNSで情報を発信・共有する:信頼できる情報源から得た事実をシェアし、ウクライナの現状を広めましょう。たとえば、ウクライナのジャーナリストや人道支援団体のSNSアカウントをフォローし、その情報を拡散することも重要です。
3. 声を上げる
可能な範囲で、ロシアの侵略行為に対する反対の意思を示し、平和的解決を求めることも大切です。
- 署名活動に参加する:国際社会にウクライナ支援を訴えるためのオンライン署名に協力することができます。
- 政治家や政府機関に働きかける:日本政府に対し、ウクライナ支援の強化を求める意見を送ることも、国際支援の動きを後押しする手段の一つです。
- デモやチャリティーイベントに参加する:平和的な集会や募金イベントに参加することで、より多くの人々にウクライナの現状を伝えることができます。
お問い合わせ
NPO KRAIANYでは、ウクライナ支援に関する講演会やチャリティーイベントを積極的に企画・開催しています。これらの活動を通じて、ウクライナの現状をより多くの方々に知っていただき、支援の輪を広げることを目的としています。過去のイベントでは、多くの参加者が実際の支援活動に関心を持ち、新たな寄付やボランティア活動につながるケースも増えています。
こうした状況の中、私たちの活動は、皆様のご支援なくしては成り立ちません。 ウクライナの人々が困難を乗り越え、平和な未来を築くために、引き続き関心を寄せ、可能な範囲での支援をお願いいたします。
ウクライナを忘れず、共に支え続けることが、未来への希望につながります。
